認知症の繰り返し行動について
認知症の症状の一つに「繰り返し行動」というものがあります。
認知症の「繰り返し行動」は、常同行動とも言われますが、一般的には自閉症の症状としての方が有名だと思います。
たとえば、おまじないのように同じ言葉をひたすら反復したり、長時間同じ場所に立ちつくしてみたり、手を叩き続けるなどの行動があります。
「前頭側頭型認知症」でも、同じ繰り返し行動が見られることがあり、脳の前頭葉が萎縮することによる認知症症状のひとつです。
ここでは、そんな認知症の繰り返し行動についてご説明します。
認知症の繰り返し行動の例
認知症の方の繰り返し行動には、いろいろなタイプがあります。
たとえば、認知症で同じことを繰り返し言うのは、間近の新しいことを記憶しておくことが難しくなる症状で、記銘力(きめいりょく)が低下している状態です。
良く聞くのが、さっきご飯を食べたのを忘れて「ご飯はまだ?」と何回も繰り返し質問する認知症患者の言動です。
酷い場合には、1分間に何回も同じ質問を繰り返す場合もありますので、関係が近いご家族のイライラが爆発することも多いでしょう。
そして、そんな間近の記憶はないのにも関わらず、自分の幼少期の記憶はやたらと確かだったりするのも特徴の一つです。
また、認知症の繰り返し行動の中には同じものを何回も買ってくるというような症状もあります。
これも、短期の記憶が苦手になっているために起きることで、決して認知症の方はわざとやっているわけではありません。
やっかいなことに、それに対して「また同じものを買って来て何なの!?」というように責めてしまうと、細かいことは忘れるのですが、イヤな感情だけはしっかりと残るということです。
ですから、認知症の繰り返し行動について、ご家族の方や介護者の方は、感情的にならないことを念頭に置いておく必要があります。
認知症による繰り返し行動の対策について
実は、この繰り返し行動は本人にとっては守らなければならないパターンの一つです。
そのパターンを阻害されると、パニック状態に陥ったり、無理に止められると暴言や暴力に訴えてくる場合があり、ご本人も家族も傷つくことになりかねません。
繰り返し行動には、毎日決まった時間になると、決まったスタイルで、決まったコースを歩き、決まった行為(買い物など)をするものがあります。
認知症の外出というと「徘徊」が想起されますが、認知機能にほとんど異常がないため、ちゃんと家に戻れます。
ただ、周囲には奇異な行動に映ることは否めないでしょう。
また、言葉の反復行為では、何を聞いても同じ言葉しか返ってこないため、ご家族のイライラが爆発してしまうこともあります。
しかしながら、認知症の方は、常同行動をすることによって、自分の心のバランスを取ろうとしている場合があります。
ですから、繰り返し行動が目についても、押さえつけることをせずに、見守ったり、別の興味へ気持ちをシフトさせるのが有効かと思います。