認知症の運転免許について
認知症になった方の運転免許について、困ったことが起きるケースは少なくないでしょう。
近年ニュースでよく耳にするのが、高齢者の運転よる高速道路の逆走であるとか、アクセルとブレーキの踏み間違いによる事故などです。
その場合の原因には、認知症による判断能力や運動機能の低下が挙げられます。
現代社会において、自動車はとても便利な乗り物ですが、危険と隣り合わせの乗り物でもあります。
私の知り合いの高齢男性は、「まだまだ運転には自信があるが、この年齢になったんで運転免許は返上した。」と、自発的に運転から退きました。
このように、自分でしっかり判断できるうちに運転免許を返納する勇気はすばらしいと思います。
認知症で運転免許を返上すべき症状は?
認知症で運転免許を返上すべき症状とは、どのようなことを指すのでしょうか?
まずは、認知症の原因疾患から見た症状と、その運転行動の特徴についてご紹介しましょう。
認知症の原因疾患で一番多いと言われるアルツハイマー型の特徴としては以下のようなことが挙げられます。
- 記憶・・・「いつ、どこで」というような記憶について思い出せません。
- 運転・・・運転中に行き先を忘れたり、車を駐車するのが下手になる。
- 理解・・・場所の理解力が乏しくなります。
次に、前頭側頭型認知症による症状の特徴です。
- 記憶・・・物の名前や言葉の意味が通じず、会話が難しい
- 運転・・・交通ルールを無視したり、わき見運転が増えたり車間距離が短くなったりする。
- 理解・・・場所の理解力は低下しません。
そして、最後に脳血管性認知症の特徴をご紹介します。
- 記憶・・・アルツハイマー型認知症と同じく「いつ、どこで」というような記憶を思い出せません。
- 運転・・・ハンドリングやブレーキの遅くなったり、運転中にボーっとしたりする。
- 理解・・・場所の理解力が乏しくなることもあります。
このように、認知症は、すべてと言ってよいほど運転能力が奪われてしまうものだということをご本人も介護者も知る必要があると言えます。
認知症と運転免許に関する法律について
認知症と運転免許に関する法律について触れてみます。
まず、現時点では、自分の認知症を心配して運転免許を自主返納する人は、あまり多くはないようです。
不便さや、運転の楽しみをなくしたくないというのが理由になっています。
また、ご家族が「そろそろ返納させたい」と思っても、認知症の方にはそれを言い出しづらいという現実もあります。
そこで、法律でもって返納を推し進めようと、2015年に法改正が行われ、2年以内に施行されることになりました。
75歳以上で、認知症の疑いのある方は、医師の診断書の提出が義務化され、発症が認められれば「運転免許」が停止や取り消しになります。
そこで、免許返納(取り消し)になった際に、身分証にもなる「運転経歴証明書」が発行されるようになりました。
この制度によって、ご自身の運転の履歴としても記念になり、各所で様々な特典を受けられます。
また、これを機会に、不便さを解消する方法をご家族で話し合い、運転以外の楽しみを提案するのもいいかもしれません。