認知症と転倒の危険性について
認知症と転倒の危険性について触れてみます。
認知症の介護にあたっては、最も注意しなければならないと言っても過言ではないのが「転倒」や、それに伴う骨折などの怪我です。
ふだん私たちは、特に意識もせず歩いていますが、認知症の方にとって「歩行」は、常に危険と隣合わせのことなのです。
もちろん、段差や障害物につまづいて転倒するのは、ふつうの方でもあることですし、良くわかります。
ところが、認知症の方はバランスがうまくとれないため、何もない場所で転倒するというのもよくあることなのです。
大きな理由は、平衡感覚がおかしくなることでバランスを崩して転倒したり、人によっては認知症の薬の副作用が起き、ふらついたりするためです。。
そして、一口に認知症の方の転倒と言っても、前にバッタリ倒れたり、膝から崩れ落ちたり、尻餅をつくなど、いろいろな体勢で転倒します。
また、転倒の際、ご本人は受身を取ることが難しく、介助者も転倒する人を支えきるのはかなり難しいものです。
認知症患者がバランスを崩した瞬間、介護者が一緒に倒れ込むなりして、身を挺してかばうしかできないことも現実なのです。
そして、最悪なのが、転倒による「骨折」等をキッカケとして寝たきりになり、寿命を縮めてしまうことです。
それほど、認知症の方にとっての転倒は、一大事と言えるのです。
認知症でよくある転倒のパターン
認知症の方が転倒する時に、よくやってしまうパターンについていくつかご紹介しておきます。
認知症の方の転倒パターンを事前に知っておくことで、いざという時の対処を行っていただければと思います。
認知症の方は、振り向きざまに転ぶことがよくあります。
「○○さん!」というように、いきなり後ろか呼びかけられたりすると、とっさの動きにバランスを崩してしまうわけですね。
そんなことがないように、認知症の方に話しかける時は、目の前まで行って、そこから声掛けをするようにしてください。
やむを得ず、後ろから話しかける時はあるかも知れませんが、会話の流れがない中で、いきなり呼ばれるとビックリしますので、その点は注意してください。
靴などの履物を履くとき、認知症の方はバランスを崩して転倒しやすいです。
特に、一般の方が履くような靴は、認知症の方にとっては履きづらい場合が多いですので、出来る限り「履きやすい靴」を選ぶことが大切です。
最近は、介護用のファスナーが付いたタイプの靴が豊富に売られていますので、そういう靴を利用するのも良いでしょう。
また、その他の介護用の靴で言えば、自分でかかとをギュッと押し込まなくても、足を入れたら勝手にかかとが起き上がるというタイプもあります。
もちろん、認知症の方が履物を履くときには、介護者が付き添ってあげることは重要です。
介護者の方も、認知症の方が夜中のトイレなどでにベッドから起き上がる時には、なかなか付き添いが難しいことがあります。
基本的に夜中は明かりが少なく、もうろうとすることも多いので認知症の方が転倒するリスクは高いと言えます。
また、睡眠薬などを飲んで寝ている場合は、薬の作用もあって頭がボ~っとしていることもあるので、さらに転倒リスクが高まります。
その場合、ベッドの部屋をトイレに近い場所にしたり、足元の明かりを用意するなどの工夫をすると良いでしょう。
また、あらかじめ立ち上がる時にバランスを崩すことを想定して、掴まれるものを用意しておくことも有効な手段と言えるでしょう。
認知症の転倒予防対策について
認知症の方の転倒予防としては、杖を使う、歩行器を使う、シルバーカートを使うなどの福祉用具の利用が浮かびます。
しかし、その前にもできることがあります。
- 床に障害物を置かない
- スリッパやサンダルは履かせない
- 裾を踏むおそれのあるものは履かせない
- 後ろから急に声を掛けない
- 急な方向転換をさせない
などなど・・・これらは今すぐにできることばかりです。
ですが、テーブルや椅子の「背もたれ」などに掴まろうとして前のめりになったり、掴んだ物が動いたりすれば、そこでの転倒リスクも大きくなるのです。
それらを踏まえた上での対策としては、まず「転倒しない生活環境を作る」ということです。
そして、「ここをこうしたら安全、こうしたら危険」ということを、繰り返し教えていくことが非常に重要であると現場では感じています。