認知症の見当識障害について
認知症の見当識障害は、よく聞かれる症状の一つだと思います。
まず、見当識とは、時間、場所、人物等の情報から自分がおかれた状況を判断する機能の事を言います。
認知症により脳への損傷や異常が見られると見当識は低下します。
そのため、「今自分がどこにいるのか」「今の季節は」「話している相手は誰なのか」等の時間、場所、人物が分からなくなってしまい、アルツハイマー型認知症では記憶障害の他にも見当識障害が目立ってきます。
ちなみに、見当識が正常であるかどうかについては問診によって簡単に判明します。
そのため、認知症診断が医師によって行われる場合も、この見当識の確認が用いられることが多いです。
ここでは、認知症の見当識障害についてご説明します。
認知症の見当識障害の症状について
認知症による見当識障害は、引っ越し、施設への入居、入院等の環境の変化によって、より強く症状が現れる事があります。
見当識障害では、自分が居る場所が分からなくなる為、認知症の人が1人で外出すると行方不明になったり事故に繋がる事も少なくありません。
また、自分が対面している人が家族でも分からなかったり、自分の子供でも子供であることが判断出来なくなる事もあります。
認知症の見当識障害は、重度になると住み慣れた家でもトイレの場所が分からなくなり、トイレ以外で排泄する等の事も起こります。
認知症になった方から見当識障害の症状が現れると、家族と言えどもストレスや驚きを隠せずに怒ったり、怒鳴ったりすることがあります。
しかし、忘れてはならないのは見当識障害は認知症という病気のせいだということです。
もちろん、わざとではありませんし、見当識という認識機能が壊れてしまった結果なのだという事を家族は理解する必要があります。
認知症の見当識障害への対処法は?
認知症の見当識障害に対してはどのように対処すれば良いのでしょうか?
認知症の患者が1人で外出すると迷子になってしまうからと言って、家に閉じ込めて置くことは、見当識障害に対してはあまりお勧めの方法ではありません。
それよりも、認知症の方と一緒に外出したり、近くを一緒に散歩する事が良いでしょう。
そうすることで、ご本人の気分転換にもなりますし、いろいろな会話をすることも出来ます。
春ならば「春なので桜が咲いていますよ、綺麗ですね」と会話をしたり、何月何日何曜日か分かる様にカレンダーへ一緒に印を付けていく等の工夫をするのも効果的です。
見当識障害によってトイレの場所が分からない場合には、部屋をトイレの近くにしたり、大きな紙に『トイレ』と書き分かりやすくするのも一つの方法です。
また、見当識障害で季節感がなくなることで夏でも厚着、冬には薄着をするという認知症の方もいらっしゃいます。
そんな時には、空調を使うことで体温調節をする等の対応が好ましいでしょう。
認知症の見当識障害で総じて言える事は、この様な見当識障害が起きた場合には否定、怒ったり責めたりしないことです。
その場では話をうまく逸らしたりし、本人の自尊心が傷ついたり更に興奮したりするのを防ぐ事が大切です。