認知症で思い込みが激しいケース
「思い込み」という症状と、認知症の関係についてご説明しましょう。
まず、認知症が疑われる方から「(誰かが)私の悪口を言っている。」とか、「私は近所からのけ者にされている。」という訴えを聞いたときには、ご家族は大抵「そんなことないよ。」と答えるものですよね。
しかし、認知症で思い込みが激しい場合、そんな言葉では納得しません。
それどころか、当のご本人にとっては妄想ではなく現実であるため、自分を信じてくれないという不満が募ってきてしまい、さらなる思い込みを生んでしまいます。
そんな状況に直面したご家族は、ほとほと困ってしまいます。
ただ、これを「単なる性格」と片付けてしまうと、気づいたときには認知症が進行してしまった状態ということが危惧されます。
やはり、ご家族が手を焼くほどの思い込みが続いていたら、認知症を疑ってみてもいいと思います。
認知症の思い込みは頑固者から?
認知症で思い込みが激しい高齢者の場合、周りからは頑固者と言われるケースが多いと思います。
たとえば「最近うちのお爺ちゃんがものすごく怒りっぽくなって、イヤになるくらい頑固者」というような会話はよく聞くことでしょう。
その場合、以前は優しくて穏やかで滅多に怒ることのなかった方が、食事が好みじゃないとか、言い方が気に入らないとか、本当に些細なことで怒ったり怒鳴ったりするのです。
さらには、認知症で思い込みが激しくなると、完全に本人の勘違いであったとしてもまったく認めようとはしません。
「ほら、お爺ちゃん、これこれこういうことでしょ?」
などと言おうものなら、まるで火に油を注ぐかのように怒りが吹き出してしまうケースもあります。
ですから、年を取ったから頑固者になったとか、思い込みが激しくなったと一括りにするのは、認知症の発見を遅らせることに繋がります。
なんだか最近性格が変わったとか、思い込みが激しく怒りっぽくなったという場合は、認知症の診断を視野に入れると良いでしょう。
認知症の思い込み・妄想への対応
認知症の思い込みや妄想の中では、金品を盗まれたと訴える「物盗られ妄想」がよく知られています。
また、配偶者が浮気をしていると思い込む「嫉妬妄想」をはじめ、幻覚や誤認により「誰かが家の中にいる」と思い込んだり、鏡に映った自分を認識できずに他人がいると思ってしまう「鏡徴候」などもあります。
やっかいなことに、どの妄想にしても、ご本人には確信があるため、周囲が否定しても頑として受け付けません。
ですから、物盗られ妄想に対しては「盗られたんですね」ではダメなのです。
「無くなったんですね」と焦点をずらし、いっしょに探してあげることが大切です。
嫉妬妄想に対しても、疑われている人が対応するより、第三者に「相談者役」をしてもらい、味方がいることを示してあげるといいでしょう。
また、妄想の原因には「不安感」があることも多いため、味方の存在により落ち着くこともあるということを覚えておきましょう。