認知症の嚥下障害(えんげしょうがい)について
認知症の患者が嚥下障害(えんげしょうがい)という状態になるのはよくあることです。
嚥下とは、食べた物を口腔内から舌で喉に送り、飲み込み胃に送る一連の動作のことを指します。
ちなみに、食べ物を認識して口に入れ、咀嚼(そしゃく)するという一連の流れの事を摂食(せっしょく)と言います。
そして、この2つを一連の動作とし「摂食嚥下(せっしょくえんげ)」とも言います。
今回は、認知症の方がなりやすい嚥下障害についてご説明します。
認知症で嚥下障害になりやすいのはナゼ?
認知症の方が引き起こしやすい嚥下障害とは、食べ物を認識してから胃へ送り込むまでの間に、何らかの原因によって、一連の動作が正常に機能しなくなった状態を言います。
たとえば、食事の際にむせてしまったり、食べ物や水分が食道ではなく気管に入ってしまうと、肺炎を起こす事があります。
認知症の方に起きやすい誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)等は、摂食嚥下障害の代表的な症状です。
また、認知症の病型でも、嚥下障害が起こりやすいものとそうでないものがあります。
たとえば、アルツハイマー型認知症では初期段階ではあまり嚥下障害になる事はなく、レビー小体型認知症では筋拘縮によって嚥下障害が起こりやすくなります。
しかし、認知症の後期になってくると、どの病型でも脳機能の低下に伴い日常生活動作(ADL)が低下してくる為、嚥下障害が起こりやすくなってきます。
認知症で食べない時の対応と改善は?
認知症の方が嚥下障害を起こしてしまった場合、どのような対処法があるのでしょうか?
嚥下障害が軽度の場合は、認知症の方に介護者が付き添いながら食事をすることも可能ではあります。
しかし、嚥下障害が重度になると「胃ろう」と呼ばれる栄養摂取の手段を取ることがあります。
胃ろうを簡単に説明すると、胃に穴を開けて、口からではなく体に管を通すことで直接栄養を送り込むというものです。
しかし、胃ろうは本人には身体的、精神的に大変苦痛を伴う為、認知症だからとあまり勧める事が出来る様な方法ではありません。
そこで普段の生活でできることとして、嚥下機能が低下した場合には、食事をする際の姿勢がかなり重要になります。
認知症の方の姿勢が悪かったり、上向きだと食道ではなく気管に食べ物等が入りやすくなり、誤嚥の原因となります。
そのため、正しい姿勢で食事する事が非常に重要なのです。
また、自宅でも簡単に運動ができることとしては、唇、舌、頬のマッサージ、またそれらを動かすだけでも嚥下機能の維持に効果があります。
さらに、嚥下機能の低下が進行した場合には、その状態に合わせた食事形態も考える必要があります。
飲み込みづらいもの、硬いもの等は小さくする、柔らかい食べ物にする等の方法もあります。