認知症の記憶障害について
認知症によって「記憶障害」が起きるということは、多くの方がご存知だと思います。
一番分かりやすいのが、一般的に「物忘れ」と呼ばれる、ちょっと前にあったことを思い出せない状態でしょう。
ところが、記憶障害はそれだけではありません。
そもそも、記憶には「記銘→保持(把握)→想起→再認」という流れがあります。
実は、この中のどれに欠落が生じたとしても記憶障害として現れることになるのです。
ここでは、そんな認知症による記憶障害についてご説明します。
認知症の記憶障害は大きく分けて5つ
一口に記憶と言ってもその種類は様々です。
認知症に関わる記憶としては、大きく分けて下記の5つとされています。
(1)短期記憶
「短期記憶」は文字通り短期間だけの記憶で、海馬という脳の部位に保存されます。
この記憶は時間の経過と共に忘却するか、「長期記憶」の引き出しに再保存されるかになります。
(2)長期記憶
「長期記憶」は現在に至るまでの記憶で、ふだん認識はしていないものの意識的に思い出せる記憶です。
(3)エピソード記憶
「エピソード記憶」は自分の体験を基にした記憶です。消えにくい記憶なのですが、記憶障害が進むと思い出せなくなります。
(4)手続き記憶
「手続き記憶」は体で覚えている記憶のことで、自転車の乗り方や料理の仕方など何度も何度も繰り返して習得したものです。
(5)意味記憶
「意味記憶」は覚えようとして覚える記憶です。言い換えれば「知識」とも言えます。
認知症の記憶障害への対応
認知症で真っ先に思い浮かぶ記憶障害は、短期記憶障害でしょう。
- 「同じことを(短時間の間に)何度も聞いて来る」
- 「外出から帰ってきたことを忘れて『外出などしていない』と言い張る」
- 「さっき食べた食事を忘れて『ご飯を食べさせてもらってない』と言う」
などなど、例としてはいろいろとあります。
この場合、つい間違いを訂正して納得させようとしますが、本人の不安をかき立てるだけでいい結果にはなりません。
ご本人としては嘘をついているつもりは全くないので、まずは言い分を受け入れることが大切です。
受け入れた後は、そのことに対してはあまり触れずに、さりげなく他の話題に切り替えて行くのも良い方法でしょう。
そして、記憶障害は、認知症の方と根気よく向き合うことが大切です。
現在、認知症による記憶障害を治すことはできませんが、投薬治療により少しでも進行を遅らせることができるようになりました。
ですから、ご家族や介護者の方が精神的にしんどくなるのであれば、対応としては、まず医師に相談するところから始めて見てはいかがでしょうか。