認知症による空間認識の影響について
認知症による「空間認識」の影響についてご説明しましょう。
老若男女問わず方向音痴の人、地図を読み取るのが苦手な人がいます。
これは「脳の働かせ方」の違いによるもので、生まれつきの場合が多いようです。
ところが、認知症になると、今まで道に迷うことのなかった方でも道に迷うようになることがあります。
これは、記憶力の低下と、「空間認識能力=視空間認識能力」の低下に伴う症状で、自分の現在地がわからなくなります。
目に映っている風景(空間)がうまく認識できなくなり、これまで目印にしていた建物や看板などが目印ではなくなるのです。
そのため、悪くすると「徘徊(はいかい)」に至ってしまうケースも増えてきます。
また、3D的な感覚が鈍くなり、コップを取ろうとしてコップを倒してしまうことも出てきます。
これ、は自分自身の体(たとえば手や足など)が今現在、どんな状態でどこにあるのかとコップの位置とがわかりにくくなっているからです。
さらには、廊下に敷いてあるフロアマットがそれと認識できず、「床に深い穴が開いている」と錯覚し落下を恐れて通れなくなってしまうこともあります。
認知症による空間認識能力の判別と対策
では、認知症によって空間認知能力が低下しているかどうかを知る目安には、どのようなものがあるのでしょうか?
認知症の方の日常生活の中で、以下のようなことが頻繁に起きるようなら、「空間認識障害」を疑ってもいいでしょう。
- よく物にぶつかるようになった
- 距離感がつかめなくなることが増えた
- よく道を間違えるようになった
- 以前は使えた道具がうまく使えなくなった
- 運転している車のボディに傷が増え始めた(車庫入れ時に擦るなど)
認知症で衰えた空間認識能力を鍛えるには、いろいろな方法があります。
実際にいっしょに出掛けていろいろな道を歩いてみたり、室内では(危険のない状態で)目をつぶって物を取ったり、動かしたりするトレーニングをするのもいいでしょう。
認知症の空間認識能力をチェックするには?
認知症によって空間認識が低下していないかどうかについては、簡単なチェック方法がありますので、最後にご紹介します。
この方法は、地面の上に描いた四角いマスの上を歩くというシンプルな方法です。
その際、道順と目印と書かれた地図を持ち、地図通り、スムーズにゴールできるかどうかを見ます。
具体的なやり方をご説明します。
まず、地図に正方形を描き、その中に十字を描きます。
さらに、目印となるスタートの場所とゴールの場所を、地図に記します。
そして、ゴールまでの道順を、12回ほど曲がればたどり着けるように書き加えたら準備OKです。
家の中で行う場合、まずは、スタートとなる場所を1つ決めます。
そこから、紐や新聞紙、座布団などで道となるものを作り、前述した地図を見ながら歩いてもらいます。
その際、スタートからゴールまでをスムーズに迷わずに歩ければ「合格」です。
しかし、少しでもルートを間違えたり、迷ったりした場合には、認知症の初期症状の疑いがあります。
認知症による空間認識の低下は、できる限り早い段階で見つけることが大切です。