認知症とピック病について
認知症の現場でよく聞かれるピック病という言葉をご存知でしょうか?
ピック病とは、前頭側頭型認知症の中に含まれるものです。
前頭側頭型認知症(FTD)は「前頭側頭葉変性症」の中核的な病気で、大脳の前頭葉と側頭葉に特異的な萎縮が見られる病気です。
前頭側頭型認知症(FTD)では前頭葉、側頭葉の委縮が原因となる認知症で、以前までは前頭側頭型認知症患者には必ずピック病が発症していると考えられてきました。
しかし、現在では、前頭側頭型認知症患者でもピック病を発症していない患者もいる事が研究で確認されています。
ここでは、認知症とピック病についてご説明します。
認知症のピック病になる原因は?
認知症によるピック病の原因の一つに、神経細胞内にピック球という異常物が神経細胞内へたまるという事が挙げられています。
また、アルツハイマー型認知症患者でも3分の1~10分の1でピック病を発症しています。
アルツハイマー型認知症では記憶障害が主な症状ですが、ピック病では同じ行動を繰り返す等の「行動障害」が起きます。
また認知症は、高齢になるほど発症率が多く女性の方が認知症になりやすいですが、ピック病では早いと40代から。
だいたい60代くらいまでに発症し、性別での差はありません。
ピック病には同じ行動を繰り返したり、万引き等社会的に逸脱した行動をとる異常行動等が見られます。
たとえば、異常なまでの浪費をしたり、食事では過食や異食行為、やたらと物を収集したり、徘徊するなどが挙げられます。
また、犯罪につながるケースもあり、他人の家に勝手にあがり込んだり、窃盗を働くこともあります。
認知症とピック病への対処について
前頭側頭型認知症(FTD)の中に含まれるピック病は、脳の委縮を診る為、CT・MRIで画像診断し、SPECT・PETという脳血流やブドウ糖代謝を見る検査でピック病と診断されます。
ただし、ピック病と診断されたからと言っても、残念なことに認知力の低下を改善させたり、治癒させる方法はまだ存在しません。
ピック病への対処法としては、生活環境を調整してみるのは1つの方法です。
治療薬に関してはアルツハイマー型認知症等には進行を遅らせる治療薬があるのに対し、ピック病に関しては有効な治療薬は現在開発されていません。
精神症状に関しては抗精神薬での対処もありますが、症状が酷い場合には精神科病院への入院が必要な場合もあります。
異常行動を別な許容の出来る範囲の行動へ変える事も出来ます。
また、ピック病ではアルツハイマー型認知症と違い記憶は比較的保たれる事が多い為、徘徊等で外に出ても家に帰って来ることができます。