認知症とお金への執着心について
認知症の初期症状の一つに「お金への執着心や猜疑心」があることをご存知でしょうか?
実は、認知症の介護施設に通ってくる方の中には、お金や高価な物品を持ってくる方がけっこう見受けられます。
そういうものはトラブルの元なので、施設であればご家族やケアマネージャーらにキチンと報告をして対処してもらうなど、ご家族と施設間の「信頼関係」が重要になってきます。
認知症の方のお金に関係するトラブルというのは、「お金を盗られた」という類の「物盗られ妄想」から来るものが大部分です。
施設であれば、このようなことにも慣れているため、大きな問題に発展することはほとんどありません。
ですが、ご家族となると、そうも行かないのが現状でしょう
ご高齢になった親御さんが、お金に対して異常なまでに執着心があって、一番近い存在であるはずの子供にさえ、疑いを持ってしまうことがあるのです。
実は、お金への執着は決して珍しいことでもなんでもなく、むしろ認知症の患者には、とても多い症状の一つと言えます。
認知症のお金への執着心は異常
認知症になった方の中には、お金に対して異常なまでの執着心や警戒心を持ち始めることがあります。
自分以外の人のことが信用できなくなるため、他人はおろか自分の子供でさえ信用できずに現金や通帳などを分からない場所にしまい込みます。
あげくの果てには、そのしまい込んだ場所を自分でも忘れてしまい、「お前が盗ったんだろう!」と疑い始めます。
それがエスカレートすると、自分で110番して警察を呼ぶなどというケースにも発展してしまいます。
血のつながった完全なる身内なら、まだ耐えられるかも知れません。
しかし、その家に嫁いできたお嫁さんが「あんたが盗った!」などと言われることもありますので、それはやはり大きなトラブルの原因となります。
こうなると、認知症の方も周囲の方の精神状態も尋常ではなくなりますので、話はまったく通じなくなるでしょう。
それを未然に防ぐためにも、認知症によるお金の執着に対する対処法をしっかりと覚えておくことが大切です。
認知症の方の物盗られ妄想と対応
「金品を盗られた!」という物盗られ妄想の根っこには、「お金が無くなると大変だ。不安だ。」という心理があるようです。
そのため、ご本人が他の人間に見つからないように隠しておくのですが、ここで困ったことが起きてしまいます。
認知症の方は、記憶障害のために「隠した場所」はおろか「自分が隠したこと」そのものを忘れてしまいます。
そして「お金がない=誰かに(家族に)盗られた」という自分にとってつじつまの合う結論を出してしまうのです。
この「物盗られ妄想」への家族の対応としては、とにかく否定をしないでいっしょに探し、ご本人に見つけさせることです。
「盗ってない」と否定すればするほどご本人も興奮して収拾がつかなくなります。
また、ご本人以外が探し出した物を「あったよ」と出されても、「やっぱりあんたが盗ったんだ!」となるだけです。
金品を盗られたことで混乱しているわけですから、話を変えてみたり、その場から離れながらご本人が見つけたように仕向けることも効果的な方法の一つなのです。