認知症の凶暴化について
認知症が原因で、凶暴になるという方がいらっしゃいます。
認知症のご本人としては、認知機能に障害があることで不安になり、それが警戒心となって些細なことで激しく怒ったりするのです。
また、認知症の方の凶暴化では、大声でわめいたり暴力的になって暴れることもあります。
また、認知症患者は「扁桃体(へんとうたい)」と呼ばれる、脳内で好き嫌いや快、不快の感情に関わる部位が敏感に反応することも分かっています。
人間には自尊心がありますが、これは認知症の方にも残っている大切な気持ちです。
それを、貶(おとし)めるような言動をされたときに激怒して、凶暴化する認知症の方がいらっしゃるのです。
たとえば、ご家族に「施設で失禁したので着替えをした」という旨の報告をすると、「なんでそんなことを言うのか!ばかやろう!」と怒鳴り始めます。
認知症の方でも、自尊心や羞恥心をないがしろにされて気分を害するのは、一般の方と同じなのです。
その場合は、ご本人を傷つけない配慮をすることで回避することができます。
ただし、このように理由を察することのできる場合もありますが、なぜ暴言や暴力に訴えてくるのかわからないことが多々あるのも事実です。
ご家族にとっては、それがいつ、どのタイミングで起こるのかが予測できず、困り果てるのも当然と言えます。
認知症で凶暴化、暴言、暴力、人格変化
認知症によって引き起こされる凶暴化は、認知症の種類によって原因が変わってきます。
アルツハイマー型認知症
自分の意思をわかってもらえないイライラが募っての狂暴化であることが多いです。
レビー小体型認知症
幻覚への対抗として狂暴化し、暴言や暴力が出てしまったりします。
前頭側頭型認知症
理性を司る脳の部位の萎縮のため、暴言、暴力、反社会的行為などの人格変化として現れることもあります。
実は、上記のような暴言や暴力行為は、常に傍について介護をしてくれている介護者にだけ向けられるというケースが多いです。
ですから、介護施設などにたまに会いに来るというご家族や知人には、とても穏やかだったりもするのです。
そのため、認知症による凶暴化を知る人は介護者だけということになります。
そのことによって周囲からは理解されず、介護者が孤立してしまい、とても苦しめられるというケースが多いのです。
認知症の凶暴化への対処法は?
認知症患者の凶暴化は、すべての状況において起きるというものではありません。
凶暴化は、介護者やご家族、また周囲の近しい友人などの対応の仕方によっても、出方や症状が変化するのです。
たとえば、認知症の「中核症状」によって引き起こされる「おかしな言動」や「失敗」に対して、感情的で強い口調で言われたとします。
そのことによって、認知症の症状(この場合凶暴化)が急速に悪化することがあります。
認知症の方に怒ったり、怒鳴ったりしてはいけないと言われるのは、そんな状況変化があるからです。
ところが、介護する側も人間です。
突然、人格が変わって凶暴化してしまった認知症患者に対して、感情的に接してしまうのは、ある意味仕方のないことかも知れません。
介護者やご家族の方は「人は押されれば反射的に押し返す」ものということを、頭に置いておく必要があります。
いずれの凶暴化に対しても、相手と同じトーン、同じテンションで接しないことが重要です。
いわば、「肩透かし」的な応対で相手の興奮を逸らすことも、凶暴化を回避するテクニックのひとつと言えるでしょう。