認知症の帰宅願望とはどんな症状?
認知症の帰宅願望についてご説明しましょう。
「他人の家に遊びに行っても、夕方ぐらいになると家に帰りたくなる」
そんな気持ちになった経験のある方は多いのではないでしょうか。
帰りたい気持ちになるという意味では、これも「帰宅願望」と言えるでしょう。
特に、私の経験では、子供の頃はそんなことが多かったように思います。
そんな「子供の頃のような感覚」が認知症になった高齢者の心理にも現れることがあります。
これを認知症による帰宅願望、あるいは夕方にこの願望が現れやすいことから「夕暮れ症候群」、あるいは「夕方症候群」と呼ばれています。
その他の症状で言えば、夕方に近くになるとソワソワするようになったり、怒りっぽくなったりするケースもあります。
認知症の方のデイサービスに来所していても、この帰宅願望が出ることがあるのですが、自分の家ではないわけですから当然とも言えます。
ただ、デイサービスなどの職員はそのノウハウも心得ており、個々の対処法も経験則によりわかっているので、声かけをして気をそらせたりしています。
認知症の帰宅願望は「周辺症状」?
認知症による帰宅願望は、どんな方にも起こるものなのでしょうか?
実は、認知症の症状には、その病気になれば必ず起こると言われる「中核症状」と、人によって起来たり起きなかったりする周辺症状(BPSD)というものがあります。
そんな中で「帰宅願望」は、後者である「周辺症状」に該当します。
周辺症状は、認知症の方の生活環境や周辺環境、または周りの方との人間関係の中で起きてくる症状の一つです。
周辺症状は中核症状とは違って、うまく対応したり薬物による治療を施すことで、その症状が緩和されることがあります。
つまり、認知症の帰宅願望も、介護者やご家族がうまく対応すれば、症状を緩やかにすることが出来ると言えるのです。
認知症の帰宅願望への対策
認知症の通所施設などで帰宅願望が出たときには・・・
- 「このあとお茶が出ますから、それを飲んでから帰りましょう」
- 「あとでお家までちゃんと送るので大丈夫ですよ」
- 「お家に帰ったらゆっくりしましょうね」
などと、「帰れる」ことを伝えた上で、別の話題を振っていきます。
それがご本人にとって興味の湧く話題であれば、帰りたい気持ちがどこかへ行ってしまいます。
また、自宅にいながらにして「帰宅願望」が出ることもあり、ご家族はどう対応したらいいのか戸惑うこともあります。
この症状は、たとえば、部屋の模様替えをしただけで「自分の家じゃない」という場合や、若い頃の記憶しか残っておらず、現在の家は他人の家だという場合もあります。
いずれにしても、「ここは居心地が悪いから帰りたい」という気持ちが根底にあるので、「ここ」が居心地のいい場所ならいいのです。
そのためには叱ったり、孤独にしたり、無視したりするなどご本人が嫌な気持ちになることは避けるのが賢明です。
そして、ご本人が楽しめる話で「気持ちをそらす」というのもいいでしょう。