認知症と万引きについて
認知症と万引きについてご説明します。
まず、万引きというと、昔は青少年の犯罪というイメージがありました。
ところが、近年、高齢者の万引きが社会的な問題になって来ています。
高齢で低収入(無収入)のために生活に困っての万引きもあるでしょう。
しかし、認知症が原因の万引きも多く見られるようになっているのです。
たとえば、認知機能障害により「レジを通ることを忘れる」、「お金を支払うという概念の欠落」などの直接的なものがあります。
通帳やキャッシュカードの紛失などで所持金がなくなり、やむなく犯行に及ぶといった状況もあります。
また、「前頭側頭型認知症(ピック病)」により、反社会的な行動を取りやすくなっている場合もあります。
この認知症は、「若年性認知症」のひとつですが、世間にはまだまだ知られておらず、「責任能力なし」の判定材料になりにくいとも言えます。
認知症で万引きしやすい前頭側頭型認知症
認知症の方が万引きを行う場合、反社会的な行動を取ってしまう前頭側頭型認知症(FTD)が疑われることがよくあります。
前頭側頭型認知症(FTD)は、その症状がとても多彩です。
そのため、ご家族で介護をされている方はもちろん、プロの介護者でさえも、その対応に苦労することがあります。
認知症による万引きの困ったところは、ご本人にとっては犯罪という意識がまったくないということです。
つまり、認知症の病気によって事の善悪の判断能力が失われて、犯罪に及んでいるわけです。
そのため、犯罪者としてレッテルを貼られてしまう前に、病気を発見しておく必要があります。
もし、前頭側頭型認知症(FTD)の診断を受けた人が、万引きで警察に捕まった場合、速やかに病気であることを伝える必要があります。
専門医を受診していて、その診断書があれば、起訴を免れることが出来るというケースは多いですので、病気の早期発見はとても重要です。
認知症の万引き対策について
認知症による万引きの対策については、どうすれば良いのでしょうか?
根本的な解決は、認知症の改善ということになりますが、現代医療を持ってしても認知症の完治は難しいのが現実です。
そんな中で万引き防止、あるいは事後の対策を取らなければならないご家族の苦悩は計り知れません。
それでも、いくつかの例を挙げるとすると・・・
「単独で外出させない」、「地域に認知症であることを知らせておく」、「警察と福祉各所と家族間の連携を図る」などでしょうか。
ご本人に万引きの抑制を期待するのは難しいため、周囲のサポートが重要です。
なお、今年、警察は「認知症講座受講」を全警察官と職員に義務付けたそうですが、これは徘徊老人を保護するという観点からのようです。
できることなら、もっと広く深く「認知症」のことを学んでもらいたいですね。
そして、こういった認知症による万引きや事件、事故に対して適切な対応や判断ができるようになってほしいものです。