脳血管性認知症の夜間せん妄について
脳血管性認知症に「夜間せん妄」と呼ばれる症状があります。
脳血管性認知症の夜間せん妄以外にも、せん妄という症状には、他にもいろんな種類があります。
たとえば、手術の後に起こる「術後せん妄」や、薬によって起こる「薬剤性せん妄」があります。
また、アルコール依存症の人が、病気などで急に断酒した後に起こる「アルコールせん妄」などもあります。
ここでは、脳血管性認知症の「夜間せん妄」についてご説明します。
脳血管性認知症の夜間せん妄の症状
脳血管性認知症による「夜間せん妄」とは、どのようなことを指すのでしょうか?
まず、せん妄は全体的に言うと、興奮状態になったり、幻覚や錯覚が見られるような状態にもなる意識障害のことだと言われています。
ぐったりと動かなくなってしまう状態だけではないということですね。
特に、脳血管性認知症の「夜間せん妄」は、病名の通り、脳血管の障害が原因で起こります。
夜間せん妄ですので、昼間はほとんど症状がありません。
しかし、夜になると意識レベルが低下して昼間とは別人の様になり、「せん妄」の症状が出てきます。
突然そわそわしてきたり、興奮してあたりを動き回ったりします。
また、話が通じなくなり、会話の受け答えに混乱を生じてきます。
脳血管性認知症による「夜間せん妄」の対処方法と注意点
高齢者の「せん妄」の症状は、アルツハイマー病などの認知症とよく似ているところもあります。
しかし、本質的には違うものです。
アルツハイマー病は、意識はほとんど正常ですが、症状は持続して悪化していきます。
「せん妄」の場合は意識障害が起きていますが、症状は一過性のものもあり治療可能な例が多いと言われています。
ですから、この二つを、はっきりと見分けることは重要なことです。
そのために、頭部のCT検査やMRI検査を行えば、脳の中の認知機能に重要な役割を持つ部分(海馬、視床、側頭葉、前頭葉、後頭葉など)のどこかに梗塞(こうそく)を見つかることが多いです。
また、脳血管造影などで血流の低下を見つけることもあるかも知れません。
その結果、脳血管性認知症の「夜間せん妄」に関係する何らかの脳血管障害が見つかれば、対処が必要です。
その原因となる危険因子、高血圧、糖尿病、心疾患などを生活習慣でコントロールしたり、小さいものなら脳梗塞の再発を薬剤で防いだりすることが可能となります。
梗塞や血流の低下した状態を改善できれば、「せん妄」の症状は、治癒することになります。
しかし、治療が遅れたりすると脳に障害が残ることになるので慢性化してしまいます。
ですから、早期発見と早期治療が出来るように、早い対応をする必要があるのです。
「せん妄」の症状に対して介護する上で注意点があります。
刺激となる音や光などは出来るだけ避け、家具や、時計、カレンダーなどは見慣れたものを配置して、精神的に落ち着ける環境を作ることが大切です。
また、どんな介護や看護がされているかと言うことや、周囲の状況や現実が理解できるように、ゆっくり説明することも大切なことです。