前頭側頭型認知症(FTO)とは?
前頭側頭型認知症(ぜんとうそくとうがたにんちしょう)についてご説明します。
昔、「カッコーの巣の上で」という映画がありました。
主人公が脳の前頭葉を切除するという、現代では否定されている手術を受けさせられ、何の思考も感情も持たず、言葉も発せない、体も動かせない状態に陥ります。
このように、前頭葉には非常に高度な脳機能が備わっているため、そこに障害が起これば人間性に影響が出るのは避けられないことでしょう。
前頭葉は、理性的な思考や感情のコントロールなどを司っている上、生きる気力を高める働きもあります。
また、側頭葉は聴覚、嗅覚などを司っていて、言語、記憶などにも関係しています。
このふたつの部位の障害よる認知症を、前頭側頭型認知症(FTO)と言います。
前頭側頭型認知症(FTO)の原因と特徴について
現在、前頭側頭型認知症の原因は、まだハッキリしていません。
そのため、有効な薬もないのが実情ですが、各症状を抑える「対症療法」は可能です。
また、一般的な認知症のイメージである「物忘れ」もあまり出現しません。
その上、常識から逸脱した言動をすることがあるため、「精神疾患」と間違われることも多くあるようです。
前頭側頭型認知症の特徴としては、脈絡のない同じ言葉や仕草(手を叩く、同じ場所を歩き回るなど)を繰り返す「常同行動」が多く見られます。
常同行動は、自閉症の症状として有名ですが、この認知症の症状としても出現します。
この他にも、同じ食べ物ばかりを食べたがったり、集中力が続かなかったり、思考をしなくなるなどの症状が見られます。
また、理性が働かなくなって「信号無視」や「列への割り込み」はおろか、「万引き」や「痴漢」などの反社会的な行動を取ってしまいやすくなるのも特徴です。
もし、ご家族の手に余る状態になったら医師や専門機関へ相談しましょう。
前頭側頭型認知症(FTO)の症状と対応について
前述しましたように、前頭側頭型認知症の治療に有効と言われる薬はまだ開発されていないのが現状です。
ただ、だからと言って放っておけないのがこの前頭側頭型認知症です。
というのも、万引きや痴漢、暴力など犯罪行為をきっかけに前頭側頭型認知症に気付くケースもあるからです。
つまり、身内が「前頭側頭型認知症」になった場合、本人だけではなく、家族も誤解や偏見に苦しむことがあるのです。
なかなか難しいことではありますが、身内の方がある程度の年齢になって、ちょっとでも人格が変わったと感じた場合、なるべく早い段階で認知症の専門医を訪ねてみるのが得策です。
ご本人の人権、ご家族の人権、両方を守ることに繋がるからです。
どうやって病院に連れて行くのかは、認知症の方は病院へ連れて行くには?のページに書いてありますので参考にしていただければと思います。
また、前頭側頭型認知症は、常識が通じない行動を起こすことが多くなる認知症ですので、どうしても手が付けられない場合は、認知症介護の専門家の手を借りることも視野に入れておきましょう。