認知症予備軍である軽度認知障害(MCI)について
認知症予備軍、軽度認知障害(MCI)という言葉が、最近よく聞かれるようになりました。
たとえば、高齢者の症状を見て「これは認知症なのか?ただ忘れっぽいだけなのか?」と迷うことはありませんか?
認知症は、いきなりはっきりとした症状が出るものではありません。
まずは、認知症の兆候となる何らかの状態が見られるものです。
実は、認知症と診断された方々と会話をしていても、普通の人と何ら変わりのない受け答えをする方もたくさんいらっしゃいます。
それでも、その方々は間違いなく「認知症」なのです。
そして、ちょっとした時に「ああ、そうだった。この方はやっぱり認知症なんだ。」と実感することもしばしばあります。
認知症の方々でさえそうなのですから、認知症の前段階「軽度認知症(MCI)」であれば、なおさらです。
「認知機能」のひとつに問題があるだけで生活への支障がないため、なおのこと判断しづらいのは当然と思います。
認知症予備軍の人はどれくらいいるの?
では、認知症予備軍である軽度認知障害(MCI)の人はどれくらいいるのでしょうか?
厚生労働省の推計として2013年に出されたデータによると、高齢者と呼ばれる65才以上の人たちの中で、認知症はおよそ462万人と言われています。
そして、軽度認知障害(MCI)は、およそ400万人です。
これは、65歳以上の人たちのおよそ13%がMCIであるということになります。
以下は、軽度認知障害(MCI)の定義となります。
【軽度認知障害(MCI)の定義】
- 本人または家族から記憶障害の訴えが認められる
- 年齢や教育レベルの影響という範囲では説明できない記憶障害がある
- 日常生活は(食事・排泄・衣服の着脱など)は自分で行える
- 全般的な認知の機能(常識行動・判断能力)は問題ない
- 認知症ではない
65歳以上になったら、上記ポイントを一つ一つチェックしてみるのも必要かも知れません。
認知症予備軍と健常者とのグレーゾーン
健常者の方が認知症予備軍(MCI)かどうかを知るために、スクリーニングテストが行われるのが一般的です。
認知症になるのには、何らかの原因があります。
たとえば、「アルツハイマー型」であれば、特殊たんぱく質の蓄積による脳細胞の死滅が原因となります。
あるいは、「脳血管性」であれば、脳卒中による脳細胞の死滅が原因とされます。
しかしながら、脳細胞の減少を検査するには、画像検査で視覚化するなどの必要があり、少し大掛かりになってしまいます。
そこで、「スクリーニングテスト」を受けることで、認知症の目安とすることができます。
スクリーニングテストで認知症予備軍(MCI)と判断された場合、早期治療を始めることが重要です。
なぜなら、早期治療によって症状の進行を遅らせたり、いくつかの症状においては治すことも可能となるからです。
MCIはグレーゾーンではありますが、年を追うごとに認知症への移行率が高くなってきます。
ですから、様子を見ていて「おかしいな?」と思ったら、まず専門医に相談してみましょう。